2022年10月に社会保険の適用拡大として、厚生年金保険の被保険者数が常時100人超である企業について、短時間労働者にかかる社会保険の加入要件が変更となります。今後、パートタイマーやアルバイト等の短時間労働者から加入にかかる相談の増加が予想されることから、以下では、短時間労働者の社会保険加入における賃金の考え方をとり上げます。
1.社会保険における報酬の範囲
企業が従業員に支払う賃金について、どのような体系にするかは企業の裁量に委ねられています。そこで多くの企業では、基本給と支払う目的に応じた各種手当を設けて支払っていることが一般的です。
社会保険の標準報酬月額を決める際に対象となる賃金(報酬)は、従業員に支払われる賃金のうち、基本給のほか、役職手当、家族手当、住宅手当、別居手当、勤務地手当、通勤手当、割増賃金等の現金で支払われるもののほか、現物で支給されるものも含まれるとされています。また、年4回以上支給される賞与についても報酬に含まれることになっています。
2.短時間労働者の加入要件における賃金
短時間労働者の加入要件に「賃金の月額が88,000円以上であること」がありますが、この賃金とは、週給、日給、時間給を月額に換算したものに、諸手当等を含めた所定内賃金により判断します。
この際、以下の賃金を除くことになっています。
[除外対象]
- 臨時に支払われる賃金および1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(例:結婚手当、賞与等)
- 時間外労働、休日労働および深夜労働に対して支払われる賃金(例:割増賃金等)
- 最低賃金法で算入しない賃金(例:精皆勤手当、通勤手当、家族手当)
通勤手当や家族手当は除外して考えるほか、あくまでも所定内賃金により判断されるため、割増賃金も除外して考えることがポイントです。ただし、被保険者として資格取得するときの標準報酬月額を決める際には、加入要件における賃金ではなく、あくまでも1.における賃金を対象とするので注意が必要です。
10月から新たに被保険者となる従業員に対して、説明を始められる企業もあるでしょう。賃金以外の加入要件についても、詳細な基準を確認しておきたいものです。