2022年10月1日に改正育児・介護休業法が施行され、出生時育児休業(産後パパ育休)が創設されました。これに伴い、雇用保険の育児休業給付も変更されたことから、その内容確認します。
産後パパ育休は、子どもの出生日(※)から8週間以内に4週間を上限として取得できる新たな育児休業制度です。従業員が原則として2週間前までに会社に申し出ることで取得できるほか、2回に分割して取得することも可能です。また、労使協定を締結し、事前に会社と従業員が合意することで、育児休業中であっても就業できること(以下、「合意による就業」という)が特徴の一つとして挙げられます。
産後パパ育休が創設されたことに伴い、雇用保険の育児休業給付は、育児休業給付金のみから、産後パパ育休期間に支給される「出生時育児休業給付金」と、育児休業期間に支給される「育児休業給付金」から構成されることとなりました。
新たに創設された出生時育児休業給付金は、以前からある育児休業給付金に似通っていますが、若干異なる点もあることから、制度の概要を確認しておきます。
- 支給要件
出生時育児休業給付金を受給するためには、産後パパ育休を取得した場合に、休業開始前の2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月(休業開始日以前の2年間に賃金支払基礎日数が11日以上の完全月が12ヶ月に満たない場合は、賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上である完全月)が12ヶ月以上あることが必要です。
産後パパ育休中であっても賃金を支払う会社がありますが、[休業開始時賃金日額×休業期間の日数]の8割以上の賃金が支払われているときは、出生時育児休業給付金が支給されず、[休業開始時賃金日額×休業期間の日数]の13%を超え80%未満の場合には、出生時育児休業給付金が減額して支給されます。
なお、産後パパ育休中は合意による就業ができますが、出生時育児休業給付金を受給するためには、休業期間中の就業日数が最大10日(10日を超える場合は就業した時間数が80時間)以下である必要があり、休業期間が28日間より短い場合は、その日数に比例して就業できる日数(時間数)が短くなります。この就業できる日数(時間数)を超えて就業したときには、支払われる賃金の額に関わらず出生時育児休業給付金は支給されません。
また、従業員が有期契約の場合には、子どもの出生日(※)から8週間を経過する日の翌日から6ヶ月を経過する日までに、その労働契約の期間が満了することが明らかでないことも要件の一つになっています。 - 支給額
出生時育児休業給付金の支給額は、原則として[休業開始時賃金日額×休業期間の日数]×67%相当額です。支給対象となる休業期間の日数の上限は産後パパ育休の日数の上限と同様で28日です。この際の休業開始時賃金日額は、原則として産後パパ育休開始前6ヶ月の賃金を180で除した額(2023年7月31日までの上限額は15,190円)であり、同一の子どもに対して育児休業を取得し、育児休業給付金が支給される場合には、出生時育児休業給付金を受給した休業開始時賃金日額が育児休業給付金にも用いられます。 - 申請期間
出生時育児休業給付金は、子どもの出生日(※)から8週間を経過する日の翌日から申請ができ、この日から2ヶ月を経過する日の属する月の末日までに「育児休業給付受給資格確認票・出生時育児休業給付金支給申請書」により申請する必要があります。なお、産後パパ育休は2回に分割して取得できますが、出生時育児休業給付金の申請は1回にまとめて行います。
育児休業給付金の申請は、「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」および「育児休業給付金支給申請書」によって行います。
子どもの出生日(※)から8週間以内に取得する育児のための休業は、従業員が産後パパ育休または育児休業のいずれかを指定して取得します。いずれを指定したかで、育児休業給付の申請手続きが若干変わる他、産後パパ育休を取得したときには子どもの出生日(※)から8週間を経過する日の翌日まで出生時育児休業給付金が申請できず、例えば子どもの出生後すぐに産後パパ育休を取得したような場合には、産後パパ育休の終了後1ヶ月以上経過してからの手続きになります。手続きを忘れないようにするほか、従業員に出生時育児休業給付金が振り込まれるおおよそのタイミングを伝えておきたいものです。
※出産予定日前に子が出生した場合は出産予定日
■参考リンク
厚生労働省「令和4年10月1日から施行される育児休業給付制度の改正について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160564_00028.html
厚生労働省「育児・介護休業法について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。