坂本工業では、8月よりパートタイマーを正社員に登用することにした。8月以降は正社員就業規則が適用されることになるが、年次有給休暇(以下、「年休」という)の取扱いについて、疑問が生じたので社労士に相談することにした。
今日は、年休について相談があるというお話でしたね。
はい。8月より、パートタイマーを正社員に登用します。昨年入社された方が優秀で、正社員にならないか打診したところ、本人も正社員で頑張りたいという話でした。正社員に登用することになり、いろいろ取扱いを整理しているところですが、年休の取扱いをどのようにしたらよいのか分からなかったので、教えてください。
なるほど。具体的にはどのようなご質問でしょうか?
年休付与のタイミングについて教えてください。1年に10日以上の年休が付与される労働者について、少なくとも1年に5日を取得させなければならないというルールがスタートした際に、正社員は毎年4月1日に年休を付与することに統一しましたが、パートタイマーについては、現在も入社日に応じて付与しています。
そうでしたね、以前、正社員の就業規則を変えましたね。
今回正社員に登用するパートタイマーは、2022年5月1日に入社し、その半年後である2022年11月1日に年休を付与しています。2023年8月より正社員になり、正社員の就業規則を適用しますが、2024年4月1日に年休を付与すればよいのでしょうか?
2024年4月1日の付与では、問題がありますね。このパートタイマーの方は、2022年11月1日に年休を付与していますので、少なくともその1年後の「2023年11月1日」に年休を付与する義務があります。その上で、付与する日を統一するのであれば2024年4月1日にも付与することになります。
次の付与が「2024年4月1日」では、年休を付与する期間が1年以上、空いてしまうということですね。
その通りです。
それでは、2023年11月1日に何日付与すればよいのでしょうか。このような正社員登用を想定した規定にはなっていないため、どのように考えたらよいのか困っています。
確かに、現行の就業規則をどのように当てはめて考えるのか、難しいですね。法令上、付与から1年後に次の付与を行う義務があり、また勤続期間にはパートタイマーの期間も含めて取り扱う必要があるという点を押さえておく必要があります。
貴社のルールでは、2023年11月は勤続年度の2年度に当てはめて付与を行い、2024年4月は3年度に当てはめて付与を行うということになりますね。
なるほど。考え方がわかりました。ちなみに、年休の残日数はそのまま移行すればよいのでしょうか?
今の1日の所定労働時間は何時間ですか?
6時間です。今日の時点では、5日と3時間余っています。ちなみに正社員の所定労働時間は8時間です。
所定労働時間が「6時間」から「8時間」に変更になるということですね。時間単位の部分は所定労働時間の変動に比例して、時間数が変更されるため、5日と4時間(=3時間×8時間÷6時間)になりますね。
確認してよかったです。また取扱いに困る事項が出てきましたら相談します。
>>次回に続く
時間単位年休は、労使協定を締結することで取得できるような制度ですが、取得できる従業員の範囲は労使協定で定めることができます。ここでは、雇用区分等の変更により、時間単位年休を取得できるケースからできないケースに変更となった場合の取扱いについて補足しましょう。このように時間単位での取得ができなくなるケースでは、労働者の年休取得の権利が阻害されないように、雇用区分等の変更の際は、1日に切り上げる等の措置を労使で話し合い、定めておくことが望まれます。
パートタイマーと正社員とで取扱いが異なり、雇用区分が変更となることで、現行の就業規則に取扱いが定められていない事項があるかもしれません。判断に困らないように取扱いを定めておきましょう。
■参考リンク
東京労働局「しっかりマスター 有給休暇編」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。