坂本工業ではホームページに求人募集を出しているが、今回、63歳の方から応募があった。定年を65歳としていることから、この応募について、どのように対応したらよいのか社労士に相談することにした。
こんにちは。さっそくですが、求人の応募について相談にのってください。
どのようなことでしょうか。
当社のホームぺージに求人募集を出していますが、先日、63歳の方から応募がありました。当社の定年は65歳となっており、もし入社してもらうことになった場合、2年ほどの勤務となります。このような場合、応募をお断りして問題ないのでしょうか?
入社して、2年経つと定年になるということですね。会社がどのような人材を採用するかは、会社の方で任意に決めることはできますが、求人募集に当たって原則として年齢を理由に応募を断ることはできないとされています。
なるほど。応募を断ることはできないのですね。
厚生労働省では、会社に対して、年齢にとらわれない人物本位、能力本位の募集・採用を求めています。そのため、募集・採用の際には、原則年齢を不問としなければならないことになっています。例外的に年齢制限を行うことができる事由が設けられており、以下の6つがあります。
- 定年年齢を上限として、その上限年齢未満の労働者を無期契約の対象として募集・採用する場合
- 労働基準法その他の法令の規定により年齢制限が設けられている場合
- 長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を無期契約の対象として募集・採用する場合
- 技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、無期契約の対象として募集・採用する場合
- 芸術・芸能の分野における表現の真実性などの要請がある場合
- 60歳以上の高年齢者、就職氷河期世代(昭和43年4月2日から昭和63年4月1日までに生まれた人)または特定の年齢層の雇用を促進する施策(国の施策を活用しようとする場合に限る)の対象となる者に限定して募集・採用する場合
当社の場合、この例外事由1に関係するのでしょうか?
例外事由1は、定年があり、無期契約である場合に、定年を上限として年齢制限をすることが認められるものになります。
ということは、今回は63歳という年齢を理由として応募を断ることはできないということですね。
そして、もし、65歳以上の人を断るという想定ならば、65歳未満の人という制限を設けて募集する必要があるということですね。
そのとおりです。
例外事由1に関して、今回のケース以外にも認められない事例があるため、確認しておきましょう。
- 下限年齢を付している場合
例えば、定年が60歳で、40歳以上60歳未満の人を募集するケースが挙げられます。例外事由の1に該当することを理由として年齢制限をして募集・採用を行う場合、下限年齢を制限することはできません。 - 業務の習熟に一定期間が必要であることを理由に、上限年齢を下げている場合
例えば、定年が60歳で、業務の習熟に2年間必要なため、58歳以下の人を募集するケースが想定されます。これについては、募集している職務について既に十分な職務経験を有する人から応募があったり、求人に「職務の習熟に○年程度の期間が必要」である旨を明記したりすることで、対応ができるため、一律に年齢で制限をする必要がなく、認められません。 - 期間の定めのある労働契約である場合
例えば、定年が60歳で、1年間の有期労働契約で更新ありとし、60歳未満の人を募集するケースが挙げられます。有期労働契約には年齢制限をすることができないため、このような制限は認められません。
特に自社のホームページで求人募集をする際は、間違った取扱いをしないように注意が必要ですね。
確かに最近は職業紹介事業者に依頼するときには、確認がされますね。さて、上記の例外事由の中で、例外事由3を用いることがありますが、これについては「対象者の職業経験について不問とすること」と「新卒者以外の者について、新卒者と同等の処遇にすること」の二つを満たす必要があります。
条件が付いているのですね。
はい。例えば、求人の際には、「35歳未満の人を募集(高卒以上・職務経験不問)」といった表現での制限になります。
なるほど。なかなか求人に応募がない中で、年齢を含めどのような人材を採用していくのか、検討が必要ですね。
>>次回に続く
雇入れに関する助成金として、高年齢者・障害者・母子家庭の母などの就職困難者を雇い入れたり、正規雇用の機会を逃したこと等により、十分なキャリア形成がなされず、正規雇用に就くことが困難な者を雇い入れたりした場合に支給される制度が設けられています。機会損失とならないように、どのような助成金が設けられているのか参考リンクより確認しておきましょう。
■参考リンク
厚生労働省「募集・採用における年齢制限禁止について」
厚生労働省「事業主の方のための雇用関係助成金」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。