労働契約締結の際や有期労働契約の更新のタイミングごとに、すべての労働者に対し労働条件を明示する必要があります。明示事項である「就業場所」と「業務の内容」は、現在は雇入れ直後のものを明示すれば足りるとされていますが、2024年4月以降は、これらに加えて「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要となります。そこで今回は、その具体的な記載方法や注意点についてとり上げます。
[1]就業場所・業務の変更の範囲の記載方法
今回追加となる「就業場所・業務の変更の範囲」とは、今後の見込みも含め、その労働契約の期間中における就業場所や従事する業務の範囲のことを指します。そのため、将来の可能性も含めたうえで、その範囲を明示していくことになりますが、就業場所・業務がどの程度限定されるかによって、記載が異なります。以下ではいくつか記載例を紹介します。
- 就業場所・業務に限定がない場合
- 就業場所
(雇入れ直後)〇〇営業所 (変更の範囲)会社の定める営業所 - 従事すべき業務
(雇入れ直後)〇〇に関する業務 (変更の範囲)会社の定める業務
- 就業場所
- 就業場所・業務の一部に限定がある場合
- 就業場所
(雇入れ直後)〇〇営業所 (変更の範囲)◇◇県内の営業所 - 従事すべき業務
(雇入れ直後)〇〇企画業務 (変更の範囲)本社における〇〇または△△の企画業務
- 就業場所
- 就業場所や業務の変更が想定されない場合
- 就業場所
(雇入れ直後)〇〇営業所 (変更の範囲)〇〇営業所 - 従事すべき業務
(雇入れ直後)〇〇企画業務 (変更の範囲)〇〇企画業務
- 就業場所
正社員については、上記1の「就業場所・業務に限定がない場合」に該当することが多いかと思いますが、「会社の定める営業所」「会社の定める業務」と記載するほか、変更の範囲を一覧表として添付することも考えられます。後になってトラブルとならないように、できる限り就業場所・業務の変更の範囲を明らかにし、労使で共通認識を持つことが求められます。
[2]適用のタイミング
今回の改正は、2024年4月1日以降に締結される労働契約から適用されます。そのため、2024年4月1日入社の従業員について、2024年3月31日以前に労働契約を締結する場合は改正前のルールが適用され、新たな明示ルールに基づく明示は不要です。
なお、労働条件に関する従業員の理解を深めるために、2024年3月31日以前から新たなルールにより対応することは、望ましい取組みとされています。
就業場所・業務の変更の範囲の明示方法については、厚生労働省発行のパンフレット「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?」にもさまざまな記載例が紹介されています。早めにどのように記載する必要があるのかを検討し、労働条件通知書のひな形を直しておきましょう。
■参考リンク
厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」
厚生労働省「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。