定期健康診断(以下、「健康診断」という)を秋に実施している企業も多いのではないでしょうか。そこで今回は、健康診断実施後において、企業に求められるフォローと、健康診断に関して労働基準監督署によく指摘される事項についてみておきましょう。
[1]有所見者への対応
健康診断を受診した後には、医師等により異常がないか、異常の所見がある(有所見)かが診断されることになっています。令和3年の労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況をみると、過去1年間(令和2年11月1日から令和3年10月31日までの期間)に一般健康診断を実施した事業所のうち、所見があった労働者がいる事業所の割合は66.1%となっています。
この有所見者については、医師等からの意見を聴取し、下表の就業区分と就業上の措置があれば、その内容を健康診断結果へ医師等に記載してもらいます。そして、この医師等の意見を勘案し、会社がその必要があると認めるときは、その労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じたり、医師等の意見を衛生委員会等へ報告したりするなどの対応が求められます。
労働基準監督署の調査では、この有所見とされた後の医師等からの意見聴取を行っていないとして、是正勧告が行われる事例が見受けられるため、いま一度、健康診断結果を確認しておきましょう。
表 医師からの意見聴取の内容
[2]診断結果に応じた勧奨
健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要がある労働者については、医師や保健師による保健指導を受けるように勧めることで、健康への意識が高まります。
また、有所見者のうち、一定の項目に異常の所見があると診断された場合には、労災保険法に基づく二次健康診断を受診することができます。受診の義務付けはできませんが、受診を勧めることを検討しましょう。
この他、常時雇用する労働者数が50人以上の事業場については、健康診断の結果を所轄労働基準監督署に提出することになっていますので、実施後、確実に提出しておきましょう。
■参考リンク
厚生労働省「令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r03-46-50b.html
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。