長期勤続をした従業員に対し、褒賞金(永年勤続表彰金)を支給したり、特別休暇を付与したりすることがあります。福利厚生の一環として行われることが多いこれらの制度ですが、制度を運用する上で、社会保険・労働保険の取扱いに注意すべき点があります。以下では所得税のことにも触れつつ、この内容をとり上げます。
[1]社会保険の取扱い
社会保険(健康保険・厚生年金保険)では、労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計に充てられるすべてのものを「報酬等」として扱います。
2023年6月27日に日本年金機構が公表している「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」が改正され、永年勤続表彰金について、以下の要件をすべて満たすような支給形態であれば、恩恵的に支給されるものとして、原則として報酬等に該当しないことが示されました。
- 表彰の目的
企業の福利厚生施策又は長期勤続の奨励策として実施するもの。なお、支給に併せてリフレッシュ休暇が付与されるような場合は、より福利厚生としての側面が強いと判断される。 - 表彰の基準
勤続年数のみを要件として一律に支給されるもの。 - 支給の形態
社会通念上いわゆるお祝い金の範囲を超えていないものであって、表彰の間隔が概ね5年以上のもの。
なお、これらの要件を一つでも満たさないことをもって、直ちに報酬等と判断するのではなく、その性質について十分確認した上で、総合的に判断するとされています。
[2]労働保険の取扱い
労働保険では、賃金、手当、賞与、その他名称を問わず、労働の対償として会社が従業員に支払うすべてのものを賃金として扱います。
賃金とするもの、賃金としないものは具体的に列挙されており、「勤続褒賞金」は、労働協約・就業規則等の定めがあるか否かを問わず、賃金としないとされています。永年勤続表彰金とは名称が異なりますが、勤続褒賞金と同義と考えられますので、賃金として扱わなくてもよいでしょう。
[3]所得税の取扱い
所得税については、国税庁のホームページで、以下のように示されています。
創業記念で支給する記念品や永年にわたって勤務している人の表彰に当たって支給する記念品などは、次に掲げる要件(※)をすべて満たしていれば、給与として課税しなくてもよいことになっています。
なお、記念品の支給や旅行や観劇への招待費用の負担に代えて現金、商品券などを支給する場合には、その全額(商品券の場合は券面額)が給与として課税されます。
※要件は「参考リンク」からご確認ください。
なお、記念品の支給や旅行や観劇への招待費用の負担に代えて現金、商品券などを支給する場合には、その全額(商品券の場合は券面額)が給与として課税されます。
※要件は「参考リンク」からご確認ください。
支給目的は同じであっても、それぞれの法令で取扱いが異なります。適切な運用がされているか、この機会に確認しておきましょう。
■参考リンク
日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」
厚生労働省「令和5年度事業主の皆様へ(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方」
国税庁「No.2591 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。